1999/02/23 師匠と会った話

 先日、地下鉄のホームでT川D志に超似て蝶な人に会いました。というか本人である可能性も非常に高いです。いっしょの電車に乗って、たまたま彼が座った座席のすぐ前に立つ、というポジションになったのでそれとなく観察したのですが、どうもそうらしいんだけど、確証が得られない。隔靴掻痒の気分がしました。私は談志についてはよく知らないので、以下とりあえず観察結果を報告します。
 「D志師匠」は、なぜか Nikon のマークのついたジャンパーを着ていらっしゃいました。しかし、あの人だったらなんかそういうの着そうです。また彼は二人連れで、もう一人は、非常に若い(20歳前後?)気の弱そうな男で、いかにも付き人という感じでした。で、「D志師匠」が電車の中で彼に話しかける内容は、断片的にしか聞こえなかったのですが、例のだみ声で「(メモを渡して)ここィ電話しといて……これ(とテレカを渡す)……(しばらくして急に心配になって)それ……まだ(度数)残ってンだろ?」と言う感じ。「付き人君」は、終始緊張した感じで、「はい……はい」と答えてました。今どき携帯ではなくテレカ、というのもD志師匠らしいような気もします。さらに、テレカを取り出すときに見えたカード入れが、なんというか、いかにものものだったんですよ。赤黒の縞に勘亭流の文字が入ったような。しかし、はっきりと「落語」を感じさせるのはそれだけでしたね。あとは、「付き人君」がもっていた(もたされていた?)荷物の中に、いかにも彼がもらったおみやげでありそうな和菓子っぽい包装の包みがありました。そして、「D志師匠」は、「付き人君」と上記のような会話を二三交わした後、何枚もの紙をとりだして、それを見たり、メモしたりしていました。チラシのようなものもあるので、証拠となりそうなものではないかとちらちら見ていたら、なんとそれは「特価大セール」とか書いた新聞折り込み広告を切ったものだったのです。つまり、彼はそうしたものをメモ用紙として使っていたのですね。これまた非常に「彼」らしいような気がします。メモの内容も見ようと思ったのですが(ここまでくるとちょっとやりすぎかな)きったない字で、とても読めるような代物ではありませんでした。そうこうしているうちに私が降りる駅になってしまい、降りずにこのままもうちょっと観察しようか、とも思ったのですが、さすがにやめました。
 あとで色々な人にこの話をしたところ、師匠が広告の裏をメモ用紙がわりに使っているのは有名な話だそうです。ということは、あれが「ほんものの」D志師匠であったことはほぼ間違いなさそうです。また、最近、居眠りをしている客に腹を立てて高座をおりてしまい、気をきかせたスタッフが居眠りしていた人に寄席から出ていってもらったということから、その客に訴えられてトラブルになっている、という話も聞きました。これまた、あの方のイメージ通りのエピソードだと思います。
 といいつつ私は実はあの方の落語をほとんど聞いたことがありません。私の友人は、D志は天才で、彼の落語を聞いて涙を流したことがある、と言っていたので、今度聞いてみようか、とも思います。
 というわけで、オチはないのですが、めずらしく有名人に遭遇したので、報告してみました。