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社会ニューヌ - 2月13日(氷)23時61分

コラム ニシ・タマオ氏住民票交付に思う

 日本というのは、不思議な国です。横浜市西区役所が、アゴヒゲアザラシに住民票を発行したそうです。住所は、西区西平沼町の帷子護岸。住民票コードは「しあわせ1番」と記載されているとか。横浜市は住基ネットに関して選択方式を取っているそうですが、タマちゃん、いやニシ・タマオ氏には参加するかどうかの意志は確認されなかったようで、これは問題ではないでしょうか。また、区は希望者に住民票のコピーをプレゼントする方針だそうですが、住民基本台帳法によると、住民票の一部の写しの閲覧請求には「請求事由その他総務省令で定める事項を明らかにしてしなければならない」となっています。そんなに勝手にコピーをばらまくなんて、大問題です。
 さて、アゴヒゲアザラシに住民票を発行する一方で、日本という国は、ニンゲンに住民票を与えないこともあります。世田谷区をはじめ、多くの自治体でオウム真理教(現アレフ)の信者の住民票を抹消したり転入届を受理しなかったりという事件が起ここりました。これは、日本国憲法で保証されている居住・移転の自由という基本的人権の侵害です。オウム信者はアザラシ以下の扱いを受けているというわけです。アザラシは哺乳類だがオウムは鳥だ、とでも言うのでしょうか(ベタですいません……)。
 ニシ・タマオ氏の住民票には、「ベーリング海方面を経て多摩川、鶴見川から転入」と記載されているそうです。ところで、日本は、難民条約加入後の20年間でたった300人弱しか難民を認定していません。それに対して、たとえばアメリカは2001年1年間だけで3万近く認定、同じくドイツ・イギリス2万、カナダ1万3000、等。日本はというとたった26人!(2002年はさらに少なく14人だったそうです)。また難民申請者に対しても、正規の旅券・在留資格がない、という理由で外国人収容施設に異常に長期に渡って収容する、という人権侵害を行っています(入国警備官等による暴力の存在、医療の提供がきわめて不十分、などの問題も指摘されています)。つまり日本は「きわめて難民に冷たい国」というのは周知のところです。ところが、ニシ氏はパスポートもビザも持っていなかったと思われるのに、ずいぶんとあっさりと入国を認められ、住民票まで発行するとは。まったく日本というのは不思議な国です。
 実際のところ、当のニシ氏にとって、住民票なんていい迷惑以外の何ものでもないのではないでしょうか。彼ら動物は、憲法による保証もくそもなく、行きたいところに行って住みたいところに住むだけです。乞田トモエちゃんに多摩市の住民登録を、なんてくだらないことを言う人が居なくてよかったです(いないっちゅうの)。しかし考えてみれば、カモなんて、多摩市だ横浜市だという以前に、そもそも毎年日本とロシアを行き来しているわけです。言うまでもありませんが、彼らにとってそもそも国籍なんて無縁です。考えても見て下さい。今日本にいるカモは、ロシア人ならぬロシアカモで、日本で越冬しているのか、はたまた、彼らは日本カモで、春になるとロシアに避暑に行くのか、なんてことを考えることがそもそも無意味です。彼らは一年の半分ロシアと日本で過ごす。どちらの国に帰属しているかなんてバカバカしいこととは関係ありません。
 かつてジョン・レノンは Imagine there's no countries(国なんてないと思ってごらん)と歌いましたが、カモにとっては「国なんてない」のが現実です。ニンゲンだけが想像上の国境などというものにしばられて大騒ぎして殺しあいをしたり、なんともアザラシー、いやアホラシーとニシ・タマオ氏も思っているのではないでしょうか。
(コラムニスト 小村西人)
[2月13日23時61分更新]


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